「希望はどこから来るか―未来への役割」と題して、「九条の会」呼びかけ人の一人である作家の澤地久枝さんが記念講演をしました。澤地さんは、先の総選挙の結果や国民投票法案、愛国心教育など今の日本の政治動向を深く憂慮。戦争がどんなに悲惨で非道なものであるかや軍隊は国民を守らないこと、“愛国心”と国・政府が言い出すときは危ない下心がある、などなど、かつて日本が経験したことを若い人たちに伝えていくことが大事と述べました。
また、元兵士や被災者の悲痛な体験談を紹介して、戦争が終わったあと国民は「もう戦争をしないことは常識だった。武器を持たないことは当たり前のことだった。」、だから、公布された憲法の内容を皆喜んで受け入れたのであって決して押し付けられたものではなかったと話しました。
更に、チェリストのパブロ・カザルスの言葉(※1)を引用して愛国心は押し付けられて生まれるものではないとも。「悲しい歴史をまた繰り返す必要はない。日本は、世界に対して戦争をなくしていこうと働きかける義務がある。せっかく世界に誇れる憲法があるのに、何故わざわざ戦争できる普通の国にしなければならないのか納得がゆかない。」と語り「それを思うだけでなく言っていく」ことを呼びかけました。
最後に、文学者の中野重治の『軍楽』の一節(※2)を紹介してから、希望は一人一人の中から生まれるもの、私たち一人一人があきらめずに希望を持ち続けることが大事、「あんまりがっかりし過ぎず、はりきり過ぎないで頑張っていきましょう。」とにっこりと微笑みました。
注※1) 「祖国愛は自然なものである。しかし、なぜ国境を越えてはならないのか。世界は一家族である。われわれ一人ひとりは兄弟のために尽くす義務がある。われわれは一本の木につながる葉である。人類という木に。」(〜『パブロ・カザルス 喜びと悲しみ』アルバート・E・カーン 編、吉田秀和・郷司敬吾 訳)
注※2) 「殺し合った者、殺され合った者たち、許せよ。殺され合う者を持たねばならなかった生き残った者たち、許せよ。はじめて血の中からあれだけの血を流して、ただそのことでこの静かさが生まれたかのようであった…。二度とそれはないであろう。」(〜中野重治『軍楽』)
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澤地さんの講演に続いて、「平和憲法をどう受け継いでいくか」というテーマでリレートーク。「9条の会掛川」の呼びかけ人で児童文学者の志水真砂子さんは、沖縄には軍隊を持たなかったために攻められずに済んだ島があった話を紹介して非武装であれば戦争から免れると訴えました。
「しずおか憲法9条の会」および「静岡県弁護士9条の会」の呼びかけ人で弁護士の小林達美さんは、先の選挙により小泉自民党が圧倒的多数を占めたことで憲法改正の下地が整ったこと、”国民投票法”で言論統制をもくろんでいたり”プライバシー”や”環境権”を口実にして「改正に賛成か反対か」と二者択一を迫ることも推測されるとして、法律家の立場から分析した危機感を訴えました。続いて、「有事法制に反対する在日朝鮮人ネットワーク」の李文子さんが憲法9条が歯止めとなっているから過去に日本に攻められて悲惨な目にあったアジアの国の人々が安心できていると、九条改定の動きを批判しました。
また、「しずおか憲法9条の会」呼びかけ人で「教育基本法の改悪を許さない静岡の会」事務局長である退職教員の松永育男さんが教育法と憲法の問題を取り上げ、学校現場の中に戦争の観念を作らないことを呼びかけ、「浜松・憲法9条の会」呼びかけ人である静岡県立大学看護学部講師の高崎旦子さんが戦争体験談を話し、「しずおか憲法9条の会」呼びかけ人である浄土宗栄秀寺住職の桑山源龍さんが「国豊かに民安くして兵戈用ゐることなし。(国が豊かで人々が安らかに暮らすのに、兵や武器は無用である)」(〜『無量寿経』)と説き、「平和を乱す者には断固として立ち向かう」と、常に自ら考え実践していることを話しました。
[2005/10/26]
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